先日、ある生徒さん(大人の方)のレッスンで、
『家ではもう少し弾けたはずなのに、先生の前ではミスを連発してしまうんです…』
という切実なお悩みを打ち明けられました。
子供の場合も、大人の場合も年齢関係なく、生徒さんのそういったお声はよく聞きます。お子さんの場合は、後ろにいる保護者の方が『いや。。いつもと同じだし。言い訳なので、先生聞かなくて大丈夫です!』ということも多いですが…🤣
自分自身が一番リラックス出来るご自宅という環境でピアノを練習している時、みなさんどんなことを考えているでしょうか。
人間なので、練習している時は常にピアノのことを100%〜120%考えてます!なんてことはないと思うんです。
弾きながらピンポーンなんて玄関でチャイムが鳴り『あれ、だれかな?』と一瞬でも考える、弾きながらお腹が空いてきたら今日の夕飯メニューに思いを馳せる、弾きながら時計がやたらと気になって集中できないこともあるかもしれない。
しかし、これこそ自然の摂理、
“人間だもの。”ってやつです。
しかしですね、こんな風に色々な雑念や邪念によぎられまくる頭の中だからこそ、意識して整理して上げないといざという時のパフォーマンスの精度が上がらないのです。
どういうことかというと、ここで今日の冒頭であげたテーマです。
家では雑念、邪念に支配されがちな練習なのに、いざ人前で演奏するとなったら突然雑念や邪念をシャットアウトしようとして、その分ピアノに関する思考で埋めようとする。
しかしこれは、残念ながら切り替えがなかなか難しいと思うんです。精神的な部分が頭の中の構造までを瞬時に変えてしまうなんてきっと不可能で。
頭と精神は繋がっているので、普段の思考から変えていく訓練をすれば、きっと本番でも頭の中で精神をコントロールをすることも出来るし、その逆に精神が頭をコントロールすることも出来ると私は思います。
ピアノを練習する時、私が意識していることは常にピアノの音を聴くことに集中すること。
そして、本番で意識していることは、精神が思考をリードすることがないようにすること。
思考あっての精神、精神あっての思考。どちらも調和の取れる丁度良い位置にいる時、最高に気持ちよく楽しく演奏ができます。
私の普段の練習では、音から想像するイメージが膨らんでしまい時には雑念までに発展してしまうこともありますが(笑)、基本的に練習を時間のある限りダラダラ何も考えずになんとなくすること…というのは皆無です。
そう、常に今弾いているところについてのテーマや課題について考え、やるべきことと向き合っているので、時間をただ消費するためだけの練習をすることはありません。
その時その時で、自分がどんなことを考えて練習していたか?ということを私は本番の時も鮮明に覚えています。
このメロディを弾いているときはこんなイメージで音色を作りたいと考えていた、ここの和声は響き方が独特で美しいからその綺麗さを人にも伝えたいと常に思って弾いている、、など。
その覚えていることを頭の中で再現していくと、精神的にも安定して演奏できます。
そうすると、人前での演奏やここ1番の本番で気負いすぎることなく、自分の世界観をそこに作り出すことができます。これは、そこに漂う空気を自分のものにすると私は捉えていて、自分の表現したいことを落ち着いてプレゼンする上で必須だと感じています。
なかなか違うピアノだと調子が狂う、人の前だと緊張して自分の表現したいものがあまり表現出来ずに終わってしまう、そもそもミスが多くなる…など、練習と本番の隔たりを感じている方は、明日の練習から”思考”の癖について考えてみてはいかがでしょうか。思考の癖は、なかなか自分では気付いていないものです。この練習をしているときは実はこんなことを考えていた!なんていう発見があったら、楽譜にこっそり書き込んでみてください。それは本番の時に必ず役に立つはずです。