澤田みづえの音楽活動ブログ

ポロネーズのレッスンで。

ショパンのポロネーズ。お好きな方も多いのではないでしょうか。

私は正直なところあまり。。。(苦笑)
ショパンの作品はあまり好きではなくここまで
来たところがあるので自分ではほとんど弾く事がなかったのですが、(現在は色々とショパンの中でも好きな作品は多くなってきました。)
実際に指導している中で生徒やそのお母様などに

「発表会の曲、自分の好きな曲を選んで良いので選んできてください。もしレベル的にかなり難しい場合は却下になりますが。。(笑)」

などと言うと、結構な割合でショパンの作品を選んでくる生徒が
多いのです。それだけ、やはりショパンの人気は不動なのだなと
思います。


さて、最近”英雄ポロネーズ”を指導していた時の事。

この曲、なんといってもテクニック的にはなかなかトリッキーな
部分が多く、一見すると単純だろうと思われる部分でも技術を要する事があります。
その中でもおそらく趣味の方などが弾く際に一番か二番目くらいに厄介だろうな。。と思う箇所は、中間部の左手がオクターブで

♪ミレドシミレドシミレドシ♪

とスタッカートで刻む部分かも‥しれません。
ここは同じ事の繰り返しを数ページに
わたってやるのでいい加減しつこく(笑)‥脱力が出来ていないと肘や手を痛める場所であるのと同時に、同じ動作の中なのでミスをした場合に目立ちやすいという大変厄介な場所なのです。

例外なくここの場所でのミスタッチ等に苦しんでいる生徒の一人に

「ここがどうしてもミスしてしまって。。。」

と相談を受けたので、試しに左手だけで弾くように促すとまずまずの出来。

でもその後、また両手で弾かせてみるとメロディーラインである右手が
入る事で意識がそちらへ行ってしまい左手のミスに繋がってしまう
という事の繰り返し。

まず私がアドバイスしたのは、

1 とにかくゆっくりと練習!

問題のある左手だけの練習は勿論続けながら、それだけでなく両手での練習をとにかくゆっくりと反復練習する事。1つずつの音で面倒でも止めながら、1音1音を確実に掴み、ミスする場所を素通りしない。→とかく、ミスを繰り返す人はゆっくりの練習が苦手な場合が多いです。ゆっくりと目と耳でよく確かめながら練習すると、
何が原因でミスをしているのか気づくはずですよ。

2 右手が入る事でミスするのならば、両手になった時になるべく
右手の事を考えずに弾けるよう右手はアンプしてしまう事。両手にバランス良く意識を集中して見えるプロの演奏でも、必ず得手不得手は人それぞれあり、その時々で右手だけに集中していたり、左手よ‥どうかはずれないでおくれ‥などと左手だけに念力を送っていたり(笑)そんな事はしょっちゅうありながら演奏しているものです。肝心なのは意識の配分、これを少しでも誤るとミスに繋がります。

3 プロの演奏は数人聴きましょう!

人の演奏を聴く事はとても大切です。スポーツでもなんでも、やはり素晴らしい選手のフォームをまねたりする事から始まり、それを何度も繰り返し練習する事によって自分独自のスタイルを気づいていく。。そんな上達の仕方は、演奏に於いても多いに賛成ですし、
私も初めての曲を弾くときには数人の演奏を出来るだけ聴く事から始めます。

しかしこの時重要なのは、真似出来る事と、真似しなくても良い事を見極める事。そして、一人だけではなく必ず数人の演奏を聴く事です。プロの演奏は、とかく自己表現をしがち。作曲家の意図に忠実な演奏もあれば、全く無視して自己主張の固まりのような演奏も勿論あります。プロの演奏だからと言って、全てがハイレベルな演奏とは残念ながら言えません。

そのような中でもし一人だけの演奏を聴いて、自己主張の固まりの演奏だったらあなたはそれを参考にしますか?

大切なのは作曲家からのメッセージを受け取りながら演奏する事。これはクラシックの基本です。
作曲家の意図に忠実ながら、自分の個性も音質や歌い方に現れているような演奏‥このようなハイレベルな演奏に出会えるのは何人も聴いてみないと難しい場合が多いです。(運良ければ一人目で出会える場合もありますが。)

先述のレッスンで、中間部分のテンポを軽快に速く弾いていた生徒に私はテンポを落とすようすすめました。その生徒も一人の演奏しか聴いていなかったようで、その演奏者はかなり速いテンポで弾いていたとのことでした。

ポロネーズは、もともとゆっくりとした舞曲です。
しかしながら舞曲にありがちな要素である、民族的な物というよりは、貴族の行進曲といった要素が強いようです。
中間部のところも、そういった要素を無視して突っ走るのは私は疑問に感じました。

結局ミスタッチがあるという事もあり、生徒には数人の演奏を聴く事や、プロの演奏家のテンポを鵜呑みにせず自分の技術力と相談しつつ美しく弾けるテンポを生み出す事、もともとポロネーズはそんなに速く弾かなくてはならない曲ではない事、またそのような事よりももっと曲の持つ表情、例えば”厳かに maestoso”とか”和らげた声で sotto voce ”などの表情を指図している記号を見落とさないようにする事‥‥等々を指導しました。

‥様々な部位で苦労している生徒を指導しながらいつも思う事は、
ピアノは体のあらゆる場所の神経を研ぎすませて、一度にそれらを使いこなせなければ良い演奏に繋がらない大変な楽器なのだという事です。頭はもちろんいつもフル回転、肘や肩、指のタッチの立て方、また足や腰にかかる重心の移動に至るまで一瞬のうちに全てを決めなければいけないこの難しさ。ピアノを弾いているといつまでも若くいられると言われるのも納得です。