澤田みづえの音楽活動ブログ

読譜の壁

さて、今日はレッスンを始められたばかりの導入期〜初心者のお子様にとって通らなくてはならない試練についてのお話します。

それは、読譜の壁です。

ひらがなやカタカナはスラスラと読めるようになるのに、楽譜の音符についてはなかなかスラスラとはいかない。こんなお悩みを持つ保護者の方は多いはずです。

個人差もありますが、私の経験上読譜を教えるのには3〜4歳かそれ以上の年齢のお子様が最も適していると思います。(もちろん2歳くらいのお子様でも、正しい音感を身につけさせるという意味合いでは、ピアノを始めることを推奨はできます。)

3〜4歳になったくらいから読譜を教えることが最適だと考える理由は、ひらがなやカタカナなど文字がある程度読めて、意味が分かるようになってくる年齢だということ。

読譜の仕方を説明するのに、やはり文字はある程度読めて(完璧である必要はありません)、意味を理解するということが必要だと感じるからです。

しかし、幼児の頭の中はまだまだ宇宙。。いろんなことを理解したり、自我が芽生えたり、社会性を身につけ始める年齢のお子様にとって、常に小さな頭の中は大忙し。

そんな最中にある彼女たち、さっきまでは理解していたであろうことが、今になって質問するともう分からない。こんなことの繰り返しなんです。

非常にいびつでまだらな記憶を繰り返しながら、ひたすら定着するまでその”出来たり出来なかったり状態”を繰り返していく

これが当たり前なのです。

しかし、突然分かっている風の我が子に一喜、また別日に同じことを質問したら別人のように全く理解していない様子に一憂してしまい『昨日は少し分かっていた風だったのですが…』と途方に暮れる保護者の方。。分かります、そうですよね。(笑)

私はそんな困惑される保護者の方に、お子様の普段の楽譜を読んでいる様子を聞いて、何がどう理解出来ていないのかを分析しつつ、違った角度でアプローチして、日々読譜について教えています。

音は、上がったり下がったりと五線の中を行ったり来たりしますが、ある程度年齢を重ねたお子様になら身につく感覚であるこの上がり下がりも、まだ規則性を理解しにくい小さなお子様にとってはあちこちにただ自由に散らばっているととらえている子が多いです。

しかし大人たちにとっては、そのルールを理解できないということ自体がよく分からない。分かったとしても、どのように教えれば良いのか検討もつかない…という状態です。

楽譜の音が上がったら鍵盤では右に移動、逆に音が下がったら鍵盤では左に移動という風に基本のルールを教えるのには、まずは物事を多角的に捉えて、平面の絵から立体として頭の中で組み立てられる感覚を身につけなければなりません。(例えていうなら、絵の中に階段が描かれていて、そこを登ったり降りたりしている想像が自分のこととしてリアルに捉えられるかどうか…ということだと思います)

個人差があるので、いつその子がそのルールを理解し、楽譜が読めるようになるのかは分かりません。理解出来るまで繰り返し教えて、とにかく待たなくてはなりません。

これは、とても時間がかかり、労力のいる作業です。なので、他の音楽教室では、聴き覚えを推奨してしまっているところもチラホラあると聞きます。これは限られたレッスン時間の中で急いで弾かせなくてはいけないミッションがあることで、よく起こりがちなことです。

しかし、これは大変危険です

子供は耳が良いので、聴き覚えの方がはるかに楽な作業です。後先を考えなければ、聴き覚えをさせてしまうことの方が講師にとっても楽な方法なのです。

そして保護者の方は、聴き覚えで弾ける我が子の音感の良さに感動して、楽譜を読ませるということの代わりに耳コピがあるじゃない!と安心してしまう。

しかし、必ず近い将来、楽譜を読ませなかった、読ませる努力をしなかったツケは回ってきます

中〜上級者が弾く曲となると、複雑な音が多数入り混じった曲が多くなります。私たち音大出身者は、必ず聴音の訓練を受けますが、その私たちでも一度でコピーするのは困難な曲も世の中には五万とあります。

そんな曲に取り組むようになった際に、まだ譜読みがおぼつかなかったら

一度、他教室から移ってきた音高受験志望者の生徒で、ショパンの難曲に取り組みながらも、譜読みが全く出来ないという子が過去にいました。

聞くと、その教室の先生は聴き覚えを推奨し、全く読譜について教えもせず、話題としても触れなかったとのこと。こうして、時短をした結果、とにかく早い段階で弾けるようにさせ、仕上げさせてコンクールへとどんどん送り込むという先生だったそうです。

こういった子はコンクールでも上位に入ったりするくらいの腕前でも、音高、音大に入ってしまうと授業やレッスンについていくことは出来ません。手取り足取りのレッスンは、音大の教授クラスになると当然してくれないので。

音楽家を目指す子よりも趣味で続ける子が大半だとは思いますが、いずれにしても、最初の時点でやらせなくてはならないことを省いていった結果、悲劇を生むことはよくあります。

私は、その子にとって、どこが読譜のゴールなのか?というよりも、そもそものスタート地点はどこなのか。これを見極め、その子にあった指導をすることで、聴き覚えではなく、自分で楽譜を読み、曲を奏でられるようにすることは誰でも可能なことだと考えています。

では具体的にどうするか。

その子の頭の中をのぞけるわけではないので、色々とやってその反応を見て、それをヒントとしてアプローチを変えていくしか方法はないのですが、幼児期のお子様の集中力は長くもったとして、20分ほど。この中で大人が子供に覚えて欲しいと思っている情報量を詰め込んだらパンクしてしまいます。😅

どうしても!な1点に絞り、1レッスンにつき1つの課題がクリアできるようにする。読譜に関しては、2〜3回正答をしたらOK。その正答がたとえ偶然だったとしても、本当は理解していないかも…と怪しくても、本人にあまり質問しすぎてはダメです。🤣

2〜3回の正答だとしても、そこから学び、積み重ねていく。どんな勉強でもそうですが、最初の成功体験が後に結びついて、良い結果を生み続けていきます。

だから、お家で普段お子様のコーチングをしていただいている保護者の方には、間違ったところにがっかりするのではなく、たとえぬか喜びでも良いので(笑)正答をしたところに着目して盛大に褒めてあげて欲しいです。

間違ってしまうところを分析し、正していくのは、講師である私が責任をもって遂行致します!

私は、当教室に習いにきてくれた全ての生徒に対して、譜読みが自力で速く出来ることの素晴らしさを身をもって体験して欲しいと思っています。

どんな曲でも、楽譜さえあればいつでも奏でることが出来る…生徒たちには、こんな豊かな人生を送って欲しいと思っています。